NSR整備記録

NSR250R MC21 SEのメンテナンス記録。

【基本整備】タイヤの皮むき

【基本整備】タイヤの皮むきです。

 

新品タイヤの購入時はタイヤが滑るので皮むきが必要と言われます。
ちゃんと皮むきが終わっていないと、数年後のタイヤの方が危険かも?
実際に二年目のタイヤで実証してみます。

新品のタイヤの表層には、製造工程での型抜きの為に離型剤などいろいろな薬品が塗られた状態になっているそうです。(以下この薬品を総称して離型剤と呼称)

離型剤
タイヤの成形時にゴムを型から抜きやすくするために塗布する薬剤。新品タイヤ表面についているツルツルした薬剤で新品タイヤが滑りやすい原因の一つ。

硬化防止剤
タイヤのゴムが硬くなるの
を防止する薬剤。現在はタイヤに塗り込まれているそうで表層のツルツルとは関係ないらしい。


硬化防止剤とは、ゴムの劣化を抑えるための保護材です。
ゴムは空気に触れる状態に置いておくと、どんどん劣化して固くなってしまいます。
タイヤのゴムは柔軟性がとても重要なので、店頭在庫期間中にタイヤが固くなっては売り物にならなくなってしまします。このため、タイヤの表面に硬化防止剤を塗って品質の劣化を抑えています。
※実際には硬化防止剤の他に様々な薬品が塗布されているらしいのですが、割愛しています。

中古購入当時ほぼ新品のタイヤがついていたNSRもバンクさせると異常にすべりました。

前任者はそれなりに年配の方だったらしく、整備はそれなりにしていましたがタイヤはほぼ中央部しか走行痕がなく、攻め込むような走りはしていなかったようです。

んで、ネット上でいろいろ調べてみた結果、離型剤は経年劣化でどんどん滑りやすくなるとのこと。


つまり古くなればなるほど、離型剤は危険ということになります。中古車についている2〜3年経ったタイヤの離型剤たるや、まるでプラスチックです。

硬化防止剤が硬化を防止するのは中にあるゴムであって、硬化防止剤自体はどんどん硬化するというネタのような状態なのですね。
触ってみると、中心部に比べて明らかにツルツルしています。
中古車を購入した人はもとより、新品タイヤに交換してから、タイヤのメンテナンスをしていない人にも読んでおいて貰いたい内容となります。


タイヤメーカーのホームページを見ると、新品タイヤ換装後は100kmほど慣らし運転をしてください。となっています。

TIPS:新品タイヤ換装時は、少しエア圧を落とし気味にすると良いそうです。ならし運転の空気圧。(これも本当の正解はどうなんだろうなぁ)
新品タイヤにご注意。 - 柏 秀樹 OFFICIAL BLOG

俺と一緒に風になろうぜ! : タイヤの空気圧について

空気圧の真実 - テストライダーという仕事

これをバイクのタイヤの皮むきと履き違えてしまうケースがあるようです。
新品タイヤ換装後の100kmの走行は、リムとタイヤをなじませるためには有効でとても重要な事ですがタイヤの皮むきという意味では、走行距離とは比例しません。
教習所で習うような走行で、ほぼバイクをバンクさせない走りでは何万キロ走ってもタイヤのサイドまでは接地することが無いからです。

四輪車の場合は接地面はタイヤのグリップラバー面全体にまんべんなく当たるので、それで問題はないんだと思うんですが、バイクのタイヤはそうはいきません。

新品換装から2年も経つと、タイヤのサイド側の離型剤はどんどん堅くなっていくと思われます。

そこで問題になるのがサイド部分のタイヤが使えない事による危険性です。
バイクがバンクしている状態は、遠心力が強くかかっている状態で、タイヤは遠心力と車重、加減速パワーを受け止めなくてはならない状態で、バンクがキツイほど同じ速度なら負荷が増大します。まっすぐ走っているときの数倍のグリップ力が必要です。
バイクを思い切りバンクさせなくてはいけないという状況は、一般の人には危険回避時か転倒寸前の状況です。そんな最後の保険の命綱とも言える部分が硬化してツルツル。考えただけでも冷や汗ものです。


カチカチの離型剤が残った状態のサイド部分を久しぶりに使ってみたら、もうツルッツルなので、びっくりするほど良く滑ります。自分もかなりヒヤっとしました。
このままでは緊急回避時や、ちょっと頑張って走りたいときに危険です。
今日はそんなタイヤの皮むきを実践しました。


今回はホワイトベースの二宮さんの方法を実践しました。
ビデオもあるので参考になります。

自分でできるバイク整備 正しいタイヤの皮むきの仕方 - YouTube

重要
ビデオの中でもおっしゃってますがこの方法は、独自の方法で何かしらの保証があるわけではありません。
当ブログも管理者が良いと思った方法をご紹介するもので、管理者は文責を負いません。最終判断と、この方法を実践した上での全ての責任は読者の自己責任となりますのでご注意下さい。
二宮さんはビデオ内で硬化防止剤と表現されていますが、メーカーからの解答として離型剤との表現となっていたので、当ブログではタイヤ表皮部の滑る材質のことを離型剤と表記しています。
当ブログでは今後も正しい情報を模索していきます。
※コメント欄も併せて参考にしてください。



道具
では実際に、タイヤの皮むきを実施します。使う物は

・100円ショップで二本百円で売っている靴磨きブラシ
・台所用クリームクレンザー
(2014.4.1追記:元タイヤメーカー勤務のNumber36さんからのコメントによるとクレンザーはタイヤの油分を奪うので使わない方がよいらしいです。とりあえず自分はクレンザーでやっちゃったので、水洗いだけで離型剤が落とせるかどうか試せてはいません。逆にクレンザーでやっちまった結果もレポートしたいと思います。)
・水道水

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これだけです。


状況確認

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新品から約二年経過したタイヤ、4000km程度で慣らし運転が主なのでセンター部分しか使っていない。
タイヤ右側のスリップ痕は先日テスト走行した時にズルズルッと滑ってヒヤッとした痕跡。
路面温度5度、時速15km/hくらいでズルっとくるくらいものすごく滑る。



タイヤに水をかけます。水をかけるのを止めると、タイヤの表面からスーッと、水が引いていきます。

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水をかけて数秒後、赤線から外側のサイド部分が明らかに水を弾いてすぐ乾く
上の写真のスリップ痕とサイドの水弾き部分が完全一致。一気に滑るゾーンになっていたw

この時の、タイヤのセンターとサイドの違いに注目してください。
タイヤのセンター部分は、しっとりとぬれた状態を保っています。
ところが、離型剤が残っているサイド部分は水をスーッと弾き飛ばし、水玉を形成し、すぐに乾燥してきます。

タイヤに触ってみると、センター部分はすこしペタペタした感じ、サイド部分はツルツルした感じがすると思います。これが離型剤の残っている状態です。

2年も経ったタイヤは大抵この状態になっています。
皮むきとは、この離型剤を取り除く作業になります。



実践
クレンザーをたっぷりつけてゴシゴシ擦ります。別にコツもなにもありません。クレンザーをつけてゴシゴシ擦る。これだけです。力をいれてゴシゴシやってもタイヤが痛むようなことはありません。路面との摩擦に比べれば微々たる物です。
※クレンザーは使わない方が良く水洗いで擦るだけで充分という意見もあります。
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靴磨きブラシにたっぷり液体クレンザーをつけて硬化剤をこすり落とす。

ある程度磨いたら、もう一度水をかけてみます。

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上部が皮むき前で水を弾き水玉ができている。下部が皮むき後、明らかにタイヤが保水している。

 
フロントタイヤはさらにわかりやすいほど写真に差が出た。

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フロントの皮むき前、サイド部分があからさまに水を弾くプラスチックのような状態
肉眼でみれば、フロントもリアも大差がない。写真写りの問題。

 

タイヤを磨くとタイヤの表面がきめの細かいスポンジのようにしっとりとぬれた状態を保つようになります。これで皮むきはOKです。

フロントタイヤも皮むきする前と、皮むきをした後の比較してみます。
明らかに、水の弾き方が違っています。

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フロント皮むき中の写真、左の写真は上部、右の写真は下部が皮むき済み。明確な差がある。

あとはタイヤの全体を同じ方法で皮むきしていけばOKです。
クレンザーがタイヤに残らないようにこまめに水洗いをしてください。

水をかけてタイヤの状態を確認する
   ↓
見える部分をクレンザーでこする※コメントも参照してください
   ↓
水洗いして水を弾かなくなったか確認する
   ↓

水洗いして、余計なクレンザーを流す
   ↓
タイヤを回す
   ↓

この手順を繰り返して離型剤を完全に除去します。

個人的にはサイドウォール部分まで洗わないほうが良い気がするので、タイヤの接地面だけにとどめましょう。

最後にタイヤ全体を水洗いして終了です。
作業時間は20分ほど、とても簡単な作業で誰でもできます。


タイヤ全体がペタっとする感触になっていれば皮むきは成功しています。
これで、バイクをバンクさせた時もかなり安心です。

カチカチのプラスチックと、ぺたぺたしたゴムのどっちがグリップが得られるかは明確だよね。さすがに自分のタイヤがこんなにも水を弾く様を見たときは怖かったですw

この方法で皮むきをしておけば、皮むきをしていないバイクに比べてバンク時の限界がぐっと上がるので、いざというときに身を守ってくれるかもしれません。

まとめ

  • 新品タイヤは滑る上にリムになじんでないので、100kmは低速で慎重に走行
  • タイヤの表面の離型剤はよほどの理由が無い限りすぐに皮むき?
  • 深いバンクは走行で落とすのは上級者以外危険、基本的に深いバンクはタイヤを暖めてから使う
  • 秋に購入して、ほとんど乗らないときは離型剤を残し春に皮むきも良い方法?
  • 古くなったタイヤほどサイド部は危険。皮むきの必要性がある?
  • クレンザーによる皮むきは安全な上、とても簡単。ただし経験談によるもので正しいかは不明。
  • 個人的にはNumver36さんが嘘をつく理由が無いと思う上に理にかなっていると思うので水洗いが正解と思う。ただし試せてはいない。
  • 正しい方法は模索中。どうも皮むきは根が深い感じがするので情報があれば教えてください。


サーキットに持ち込みでもしないかぎり、皮むきはこれで十分だと思います。
サーキットで走行する場合は、ベストな状態を保つ場合は皮むきに合わせて、コンパウンドを溶かしたり、温度管理をするなどレース用のコンディション管理が別途必要です。

(2014.4.1追記:元タイヤメーカー勤務のNumber36さんによると現在はサーキット走行では皮むきは必要無く、温度管理だけで充分らしいです。これからも正しい方法を模索していきたいと思います。
善は急げということで本件についてはタイヤメーカーにも事実確認中です(^o^)
もし解答が頂けたら追記します。)

(2014.4.4追記:ダンロップさんによると新品交換後100kmまでは低速走行で走行することで離型剤は中間バンクまでは取れるとのこと、深いバンクの利用に関しては、スポーツ走行時は、ハイグリップタイヤは低温時のグリップが低いため、徐々にタイヤを暖め、手のひらで触って暖かく感じるまでは注意して走行し、暖まってから深いバンクを利用して欲しいとのことでした。停止状態における離型剤の剥離方法に関しては解答はいただけませんでした。※住友ゴム工業株式会社 ダンロップタイヤ営業本部 お客様相談室 
Driver's Eye お問い合わせ[11204]解答から抜粋

(2014.4.4追記:「リケイザイ」の表記について、離型剤と離形剤の両方の記載がインターネット上でも併用されておりますが離型剤の方が多数派のようですので修正しました


(2014.5.2追記:ブリジストンのお客様相談室によると新品タイヤの皮むきは必要ないとのことでした、「新品タイヤの」皮むきは必要ないとして、ちょっと古くなったタイヤのサイド部分に関しては言及いただけませんでした。まぁ深いバンク使うような走りをするなら、古いタイヤは使うべきじゃないってことなのかな?本当はもっと突っ込んだ回答が欲しかったんだけど、大人の事情がありそうなので言及は避けました。ご意見やメーカーさんの回答は随時募集しておりますw