NSR整備記録

NSR250R MC21 SEのメンテナンス記録。

NSR250R MC21 購入したらまず確認したい

NSRには弱点がいっぱいある。
誤解して欲しくないのはNSRが駄目なバイクということではない。
むしろ20年以上も経っているのにメンテナンスさえしっかりすれば、普通に走れる耐久性は賞賛ものだと思っている。

ここでいう弱点とは構造的に経年劣化に弱いパーツや、メーカーからの供給が終了しそうなパーツ、改造されやすい部分のこと。
NSRを手に入れたらこれらのパーツはさっさと交換するか、交換する準備をしておこう。
本当に弱くてダメという物もあるが、20年以上経ったから考慮しなくてはいけないという部分がほとんどである。
普通に考えて、20年放置した機械は壊れて当然なわけで、ホンダが悪いわけでもNSRが悪いわけでもない。それでも乗るからにはそれなりの覚悟が必要だと思う。
少なくとも今、市場に出回っているNSRは全体的に劣化している。
それはどんなに程度のいいものでも、メンテナンスをしていなければ確実に全体が劣化している。
メンテナンスをよほどしっかりしていても、販売時のパーツを一切つかっていないNSRは存在しないはずだ。

今回はその中でも、特に劣化しやすいパーツをチョイスした。

 

1.吸気系(常にチェックが必要)
吸気系に関しては言わずもがなな感があったので当初は記載していなかった。
当然と言ってしまっては身も蓋もないので追記した。
エアフィルタ、キャブレター、リードバルブ、排気系だがRCバルブの点検は必須。
NSRに乗るなら、上記4カ所はプラグと併せて常時チェックが必要と考えて良い。
中古で購入した場合は、各部チェックが終わった後にかならずキャブの調整が必要になる。
エアフィルタは下手をするとボロボロになったものがついている可能性が高い。
誰もが必ずチェックするだろうと思うところほど落とし穴というケースも少なくない。
エアフィルタは下手なバイク屋がいじるとオイルまみれにされている場合もある。
安いパーツなので、有無を言わさず交換しておこう。
完調のエンジンにボロボロのフィルタを吸わせて壊したら泣くに泣けない。
キャブレタは必ず毎年OH。ついでにリードバルブも確認する。古いなら交換しておく。
距離的に近いのでRCバルブのカーボン堆積も確認。問題があればOHする。
動作不良の場合はPGM3破損も視野に入る。RCバルブが動作しないマシンはそもそも購入しないほうがいい。上級者のパーツ取りマシンでしかない。


2.レギュレートレクチファイア(設計変更されている)
レギュレートレクチファイアASSY 31600-MV4-000(nun¥nun)

発電した電気を整流するパーツ。
旧型がついていると、発電した電気をうまく整流できなくなる恐れがある。
旧型は放熱が弱く破損しやすい。新型は対策されている。
PGM3の破損を防ぐためにも、安いパーツなのでさくっと新品に交換してしまおう。
新しいパーツには放熱フィンがついているのですぐにわかる。


3.フューエルコック(パッキンが泣き所)
フューエルコックASSY 16950-MV3-681(2014.3¥4150)
Oリング 16958-KM9-005 ¥145(nun¥nun)

ガソリンタンク下部についている、ガソリンを供給するコック。
ゴムパッキンの経年劣化で漏れてくる可能性が高い。
しかもコック部のパッキンは、カシメパーツの中にあるため使い捨てが前提となっている。
フィルタ単体の供給は終了。フューエルコックAssyではまだ新品が供給されているが、そろそろ供給が止まりそうな予感。純正品をストックしておいたほうが良さそう。
ただしフューエルコック部のパッキンはドリルで加工してやれば、直せないことはない。方法は後日追記します。

ストレーナの根元のOリングは液体ガスケットでも何とかなるけど、特に劣化しやすいので、一個余計にストックしておくと良いかもしれない。
すぐに交換する必要はないが、一度OHしておくと良いと思う。
特にストレーナ部分に錆が付着している場合はタンク内の確認も必要だ。

Amazonなどで社外品が流通しているがどの程度の品質なのかは不明。


4.クランクシャフト(センターシール抜け)
クランクシャフトCOMP 13000-MV3-950(2013.6¥115,000)iFactry¥128,000
2016.5.16追記:T2レーシングさんでオーバーホールが可能に!
MC21/28のクランクシャフトのオーバーホールを51,840円

http://www.t2racing.jpn.com/nsr250.html



もし購入したNSRが近年クランクシャフトの交換を実施したものではない場合、ほぼ確実に襲ってくる悪夢。
各種ブログなどを確認してみると、それなりに運行している場合でも20,000kmくらいからシール抜けが発生する模様。50,000km走っても大丈夫な人もいるようなので、運と日頃の走り方次第なところもあるかも知れない。

もちろん走行距離が少ないマシンだからといって安心はできない。

シールはゴム製なので、むしろ一度も交換されていないNSRを購入した場合は近い将来ほぼ確実に抜ける。いや、実際抜けるまでいってなくても、かなり危機的状況になってるはず。もう20年も経っているのだから、ゴムの劣化はほぼ確実に起きている。
一度も交換されていないで全く正常なんてことは時間的にありえないと思う。
個人的にはNSRを購入するなら信頼のできるバイク屋さんでクランクシャフトを新品に交換されたてのものを購入するか、クランクシャフトは交換を前提に購入するのが必要だと思う。
クランクシャフトのシールは単体での交換は基本的にできない。
そのためクランクAssyでの交換になる。2014年3月現在、メーカー供給品で11万円台半ば、iFactory製の芯だしクランクで12.8万円ほどするので、工賃込みで20万の覚悟は必要。クランクの価格は当時からするとかなり値上がりしている。MC18以前のものは井上ボーリングさんでOHも可能だが、MC21以降は現在もメーカーから供給されているので井上ボーリングさんもOHは対応してくれない。(無理をいって対応してもらった事例もあるようだが、NSRが好きならそういう無理は言わないで欲しい)
この覚悟がなければクランクシール漏れ、即廃車の爆弾をかかえて走るようなものだ。
ただしクランクシール抜けは、抜け即走行不能になるというほどではない。
シールが抜けてるのに気づかずに乗っている人も多い。
一般にシール抜けはジワジワきて、ある日突然低回転トルクが無くなったり、片肺になったりする。
もちろんそのまま運行を続けたり、無理に高回転にするとエンジンが焼き付いたり危険な場合も多いが、ほとんどの場合は低速トルク落ちたなぁくらいな感じなのがやっかい。
抜けてても1万回転まで回っちゃうし、普通に街乗りしかしないと坂道発進で苦しいくらいだったりする。
人によっては低速トルクが無いのは2ストだから当然と思っている人もいるが、本来MC21は4ストばりに低速トルクがあるとても扱いやすいバイクだ。
レースでもしないかぎり低速トルクが無いという表現は的確では無いと思う。
オークションや、見知らぬバイク屋でOH済なんて言われても信頼しちゃダメ。信頼できるバイク屋さんや、しっかりとしたメンテが出来る知り合い以外のOHは逆に怖いし、そもそもOHしてるかどうかも怪しい。クランク交換はエンジン総分解になるのでついでにどこまでOHされたかも大切だと思う。
クランクが抜けていない場合もエンジンのOHは腰上は必須。可能なら腰下まで実施したほうが望ましい。一度エンジンをあけてしまえば、ある程度の素性が掴めるメリットが大きい。


5.メインハーネス、電源周り(改造されちゃってる可能性大)
ワイヤーハーネス 32100-MV3-680(nun¥nun)

NSRはノーマルのまま維持されているケースはほぼ皆無だ。
大抵どこかイジられている。
というわけで、まず電装周りのどこが変更されているかを確認したい。
MC21はケーブル2本を細工するだけでリミッター解除できる仕様だけに、この改造も多い。
またリミッター解除には専用パーツも流通していたためレーシング仕様のパーツをノーマルのメインハーネスに無理矢理とりつける改造も流行った。
購入するマシンは必ずリアカウルを外して変な処理がされていないか確認しておきたい。
ノーマルハーネス加工や中途半端な改造でリミッターが解除されている場合は混合オイルが常に全開で供給されるので、低速時にオイルが出過ぎる。
また高回転時は逆にオイル不足に陥る。リミッター解除は諸刃の剣なのだ。
そもそもリミッター解除は混合ガソリンを使うのが前提で、吸排気も改造するのが前提になっていると思う。街乗り専用ならノーマルのままが最良と思う理由はここにある。
もちろんリミッター解除した場合はキャブセッティングも必要だし、エンジンにかかる負担も増大する。
リミッター解除は9000回転以上のマッピングが本来のスペックを引き出す物に変更される事だけに注目されがちだが、実際はリスクも大きい。

また、レーシング系の改造をノーマルのメインハーネスにしている場合、スタンドセンサーをキャンセルしたり細工している場合も多いので、スタンドを立てた状態で、ニュートラルに入れ、エンジンをかけてクラッチをにぎり、一速に入れてエンジンが停止することを確認しよう。

一速にいれてもエンジンが停止しない場合は電装系の改造か異常が少なくとも存在する。
また、ギアセンサが正常動作していないと緊急用のマッピングが利用される。これでもエンジンは動いてしまうから、中古購入時に気づかない事も多い。

現状渡しが条件でないかぎり、バッテリーやプラグは新品に中古車屋さんが交換してくれているとは思うが、それすらされていない場合は交換。そもそも中古車をバッテリーも交換しないで売る店とはかかわらない方が良いと個人的には思う。


 

6.イグニッションコイル(意外と盲点な消耗品)
フロントイグニッションコイルCOMP 30510-KV3-830 (nun¥nun)
リアイグニッションコイルCOMP 30520-KV3-830 (nun¥nun)

イグニッションコイルは普通に消耗品なので、2年に一度は交換。
ガンガン走る人はレース毎に交換する人もいるらしい。
市場で売ってるNSRはそれなりに使った後のはずなので即交換しちゃう。
万が一当たりで、交換直後の場合もあるけど、その場合は予備パーツに保管しておけばいい。汚れてる場合は古いと判断して交換。プラグケーブルも交換。ついでにアーシングするとなお良いんではないかと思う。
純正部品の供給はまだあるし、社外品もまだ普通に入手可能。
これが劣化すると火花の飛びが悪くなるので、他のパーツが完調でも不完全燃焼でカーボンの堆積を促進してしまうしセッティングも出ない。なによりNSR本来の走りが出来ないのでもったいない。高いパーツではないので早めの交換が吉。
全然交換されていないケースもある。盆栽系は要注意。
プラグの交換は言うまでもなく必須。


 

7.各部ゴムパーツ(消耗品、特にホース系はヤバイかも)
振動吸収用ゴムパーツ、ホース系。
これらのパーツはゴム製品だけに劣化している場合が多い。
ただ、今のところほとんどのゴムパーツは供給がある。
純正品を使い続けたい場合は、これらのパーツは入手しておいたほうがいい。
特にホース系のゴムは予算がゆるせば、できる限り交換しておこう。
供給は純正品も社外品もそこそこあるのであまり心配はいらないかも知れない。
20年経ったので絶対交換と書くが逆に言えば交換してしまえば、よっぽど過酷な条件で使わない限り10年くらいはもつ。


 8.各種マニュアル(メンテナンス時には必須)

・サービスマニュアル
なにはともあれ、これが無いと整備できない。
自分で分解しない場合は信頼できるバイク屋さんが必須。
ただし日常整備の為にもサービスマニュアルはかならず用意しておきたい。
MC21SEは型式(L)を参照する。
・パーツリスト
必要なパーツを発注する際の型番を調べるために必要。
バイク屋さんで「このパーツお願いします」でも大丈夫だけど、型番でお願いした方が間違いが少ない。
サービスマニュアルでは形状がわかりずらいものも多いので、パーツリストとの併用が望ましい。中古のNSRでは似た部品が他の部分に使われてしまっていることも多いのでその修正のためにも、あったほうがいい。


雑感
個人的には30万円でそこそこの車体を購入して40万円で一通りしっかりメンテをすれば、それなりに素性が明らかになるので、それなりに長く楽しめるだろうと思う。
簡単に言えば今からNSRを買うなら、直近の整備費として最低でも40万円の余力が欲しい。
逆に最初から60万円もするNSRを買って、すぐにセンターシールが抜けた場合、当然実際のメンテナンスも甘かっただろうから余計にお金がかかる。あっという間に100万コースだ。
40万円以上出してNSRを買えるのは、中身が本当に信頼できる整備をうけている場合だけなんじゃないかと思う。
どちらにせよ、20年以上経ったバイクに70万以上出せるよっぽど好きな人じゃないとオススメはできないのだよね。70万あれば新車の400ccクラスが買えるモンね。

追記予定